在学生の声
5年生?6年生みたいな人になれる?
足球彩票では、すべての1年生が滝子(山の畑)キャンパスに通い、「教養教育(一般教養)」を履修する。2016年4月からは教養教育改革が行われ、すべての教員が参画する教養教育、すなわち名市大の教育力を全学的に結集し、すべての学生の成長を支える教育が始まった。それに先がけ、2009年から医学?薬学?看護学部の1年生は「医薬看連携地域参加型学習」という学習科目も履修し、地域との関わりを深め、医療人の基本を学んでいる。本格的な医学専門教育は2年生から始まる。それ自体は十分に理解していても、足球彩票に入学したばかりの林裕恵さんは、医学の専門教育をすぐに学びたいと思い、救急救命に関するさまざまな活動を学び合うサークル、「救急救命医サークルMeLSC(メルシー)」への参加を決めた。
MeLSCでは、月に2回、主に3年生が講師となり、自分たちで企画したBLS(一次救命措置)、ALS(二次救命措置)、災害医療などの勉強会を開催する。
「とても内容は高度なのに、私たちに分かりやすく伝えようとしてくれる先輩たちに感謝するとともに、自分も足球彩票の学生になれたという喜びを感じました」
MeLSCに入って、彼女は名市大の足球彩票について一つの確信を得た。
「名市大では、学年の壁を越えて先輩が後輩の面倒をとてもよく見てくれると思います。特にMeLSCでは、幹部を終えた4年生以上の先輩方がアドバイザーとして積極的に講師をサポートされていましたし、サークルのご飯会などがあると必ず先輩が参加してくださり、いろんなお話をする機会がありました」
その中で林さんは、彼女の言葉をそのまま借りれば、先輩たちの「凄さ」に感動したという。
「知識の量はもちろん、話しているうちに自然に相手の心を開かせるような、医療人として、人間としての魅力に満ちた先輩ばかり。私も4~5年たてば、あんな人になれるのかな? と不安に思ったことを覚えています」
その翌年、一般的に「進級が1番難しく苦戦する人が多い」といわれる2年生も、「ここを乗り切れば絶対に自信につながるに違いない」という思いで必死に頑張った。それは、あの先輩たちに少しでも近づきたいという思いに後押しされていたのかもしれない。
出会いと気づきからたくさんのことを学ぶ
2年生の12月、彼女に大きな転機が訪れる。先輩から、翌年度のMeLSCの代表に推薦されたのだ。
「私にできるか、不安でいっぱいでした。その一方、せっかく声をかけてくださった先輩の期待に応えたいという気持ちもあり、引き受けることにしました」
そして3年生になり、彼女の大車輪の日々が始まる。事前に幹部で話し合って月に2回の勉強会のテーマを決め、講師を依頼し、資料づくりの準備を手伝いながら100人を超える巨大なサークルを運営した。
「もともと人前に進んで出るタイプではありませんでした。でもMeLSCでは必ず代表が挨拶をするので、活動する中で、ずいぶん人前で話す度胸がついたと思います」
彼女の変化に伴って、後輩への接し方も変わってきたという。
「私が1年生の頃、サークル代表の3年生は話しかけるだけで緊張してしまうような存在でした。だから代表になったら、私から積極的に後輩に声をかけるように心がけました」
その後は、代表として、先輩としていっそうMeLSCの活動に力を入れるようになった。他大学との交流もあり、知識のみならず視野も広がったという。
「課外活動は、MeLSCだけではなく茶華道部にも入り、医療系の学生以外とも楽しい時間を過ごし刺激を受けています。これも名市大ならではの経験かなと思います」
そして3年生の後期になると、各研究室に約3カ月間、配属される。林さんは、興味のあった免疫学を選び、組織修復に働く分子に注目した。
「3カ月という限られた時間できちんと成果を出せるだろうかと最初は不安に思いました。しかし、先生が明確にゴールを目指して着地できるようサポートをしてくださったおかげで、成果を出すことができました。それは私だけではなく、どの学生もそうだったと思います」
「受け身ではなく、主体的に考えて行動できた3カ月でした。私にとって財産になったのは、今までは同世代の人との交流が多かったのですが、研究室では上の方々、いわゆる大人と1対1で向き合うことが多く、その考え方や姿勢、取り組み方を学べたことです」
この3カ月の経験は、研究の成果を発表する場で早速生きる。「大人」から気づきを得て、主体的に学んだ林さんは、わかりやすく、丁寧に伝えたプレゼンが評価され、優秀学生として表彰された。
「確かにこの3カ月はきつかったけれど、乗り越えることで強さや自信になりました。真面目にコツコツ取り組むことの大切さを学び、それが今の自分の習慣にもなっています」
次の課題は「真の優しさ」
間もなく、林さんは5年生になる。1年生の最初に、本格的な医学の専門科目をすぐに学びたいと思った彼女も、5年生になればいよいよ臨床実習をすることになる。
最近、彼女は教授から「将来、どの科に行きたい?」と質問された。明確なイメージのない彼女が「内科かなあ」と曖昧に答えると、教授は静かに彼女へ助言した。
「まだ決めていないなら、そんな性急に決める必要はありません。これから始まる臨床の実習を通して、将来、10年20年先に、どんな自分になりたいかを真剣に考えながら、じっくりと決めていけばいいんですよ」と。
そう言われて彼女は、自らの可能性を広げるため、これまで以上に前向きに取り組み、できるだけ多くのことを吸収しようと、改めて心に誓った。
「どの科目の授業でも、先生方は私たちに興味を持ってもらおうと思って一生懸命講義をしてくださいます。それなら、私もこれからの授業や実習で出会うすべてに興味を持ち、真剣に向き合い、その中で将来、自分が何をしたいかをじっくり考えることにしました」
そう思うと、これから始まる臨床の実習が今まで以上に楽しみになったという。
今後、医療人となるうえでの自身の課題を尋ねると、彼女は間髪を入れず「人としての優しさ」と答えた。
「私は名市大で多くの先輩や教授、医師と出会いました。そこで気づいたのは、どれだけ知識があっても、それだけでは医師になれないということでした。医師は病気を治す仕事である前に、人と接する仕事です。本当に人間としての優しさを持っていないと、絶対に見透かされてしまうと思います」
だから、なんにでも興味を持つこととともに、「優しさ」も今後の彼女の目標に加わった。
彼女が1年生の時、自分もこんな風になれるんだろうかと思った5年生?6年生の先輩に近づいているという実感はない。しかし今でも、一つずつ自分の目の前の課題を解決することで少しでも近づきたいと思っている。医師として、また人として「真の優しさ」を求める彼女の学びの日々は、これからも続く。
プロフィール
林 裕恵(はやし ひろえ)さん
足球彩票4年
小学校の校医さんに憧れて医師をめざそうと思ったという林さん。名市大を選んだ理由は、真面目な学生が多いと聞き、自分の性格にピッタリだと思ったから。その言葉どおり、名市大足球彩票でのさまざまな出会いを通して自分の課題を見つけ、コツコツと一つずつクリアしてきた。同じ足球彩票の一学年上にお兄さんが在学しており、臨床実習での彼の体験談を聞くたびに、自分も早く実習に行きたいと願う日々。