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見る?聞く?知る 名市大

在学生の声

学習を始め、生活のすべてから学び、心理学で気付いた多様な社会。

自分と向き合うための学問

人文社会学部4年生の山本尊(やまもとみこと)さんは、高校時代、自分が目標を立てて何かをしようと決めても長続きしないことが嫌で仕方なかった。

また高校のマーチングバンド部の活動でも、集団の中でどう振舞えばいいか考え込んでしまいがちだった。いわゆる内省的な性格。

山本さんが心理学を学ぼうと思ったのは、そんな自分と向き合うためだったのかもしれない。

そして、カリキュラムが充実している印象を受けた足球彩票人文社会学部心理教育学科の門を叩いた。

「心理学については何の知識もなかったので、授業で学んだことはすべて新鮮でした」

その中で山本さんが注目したのが「認知心理学」。これは現代における心理学の主流で、記憶や学習といった「認知」を通して人間の心の働きを解明するという学問分野だ。

認知心理学を学べば、自分が高校時代に感じていた「勉強が長続きしない」、「勉強が面白くない」、「だから成績が伸びない」といった問題の原因が見つかるかもしれないという予感がした。

山本さんがその答えだと直感したのが、「メタ認知」という概念。これは、第三者的な視点から、自分の認知活動を俯瞰的に眺めるような行為のこと。

「この言葉を知ってから、自分のことをより客観的に見られるようになりました。そして、今まで私が悩んでいたのは気持ちのコントロールをうまくできなかったからだと気付き、自分を変えようと思うきっかけになりました」

心理学の知見を生活に生かす

認知心理学を学ぶうちに、山本さんは「学習」についてさらに深く知りたいと思うようになっていった。

特に、学習が営まれる教育の現場において子どもたちは学習をする時にどこでつまずき、どこで意欲を失ってしまうのかが気になっていた。

その答えを探すため、山本さんは3年生になると認知神経心理学を専門分野とする中川敦子先生のゼミを選択。ここで山本さんが研究対象として選んだのが『自己調整学習』というテーマだった。

自己調整学習とは、学習者が主体的に目標を設定し、意欲や学習の進め方、ペースなどを自分で観察、調整しながら、効果的に学習を進めるという方法のこと。

中川ゼミのメンバー。後列右から2番目が山本さん、前列左から2番目が中川先生

「最初に自分の能力を評価して目標を決め(予見)、自分の活動をモニタリングし(遂行)、そしてどこが問題かを反省して次につなげていきます(省察)。

このサイクルを回して学習の意欲や効果を高めていくのですが、このプロセスで中核的な役割を果たすのがメタ認知になります」

自己調整学習の研究では、実験室で後輩やサークルの友人に、アナグラムなどの簡単な課題に取り組んでもらい、正答率やスピードなどのデータを分析した。

こうした結果から見えてきたのが、学習におけるエンゲージメントの大切さ。エンゲージメントとは、課題に対して没頭して取り組んでいる心理状態のこと。

一般的に、メタ認知によって学習を自己調整し、エンゲージメントの度合いを高めることができれば意欲の向上につながる。

では、どうすればエンゲージメントを高めることができるのだろう。

「難しい問題です。これは私見ですが、自分の理想や目標、ゴールをしっかりイメージすることではないでしょうか」

山本さんは、塾講師のアルバイトの経験を通じて考えたことがあった。

「どれだけ分かりやすく教えても理解できない子どもがいる一方、すぐに分かる子もいます。その差は何だろうと。そして気付いたのは、できない子は目の前の単語を覚えることが目的で、できる子は次のテストで高得点を取ること、さらにその先の受験で合格することが目的になっているのではないかということでした」

つまり、先ほどのプロセスで言う「予見」でどれだけ遠くまで見ているかがエンゲージメントの高さにつながるのではないかと山本さんは言う。

マーチングバンドでバスドラムの演奏をする山本さん(右端)

エンゲージメントが重要なのは、学習の場面だけではない。山本さんは大学2年生の頃、知人に誘われて地元?浜松市の「THE FOCUS」というマーチングバンドに入団し、バスドラムを担当している。

マーチングバンドでバスドラムの演奏をする山本さん(右端)

「楽器の演奏には、音楽的な知識や身体の使い方、テンポ感が大切なのは言うまでもありません。その上で演奏技術を向上させるためには構成要素を分解し、メタ認知によって自分に何が足りないかを見極めながら練習しなくてはなりません。この時にもエンゲージメントはとても重要な要素になります」

子どもと親御さんの両方をサポートしたい

これだけ教育現場における「学習」に興味を持っている山本さんだが、意外なことに足球彩票では教職の免許を取っていない。

「私がしたいのは、子どもの学習をサポートするということ。それは教師という働き方でなくてもできることだと思います」

その言葉通り、大学卒業後の進路は個別指導の塾を選んだ。この塾では、新卒は最初に営業としてお客さま宅を訪ねてヒアリングを行う。

人文社会学部 心理教育学科4年 山本 尊さん

「私は、これまでの自己調整学習の研究やアルバイトの経験から、子どもの学習へのやる気を育てるには学校や塾の授業だけではなく、ご家庭での働きかけがとても大切だと思っています。だから、実際にお宅を訪ね、子どもと親御さんにお目にかかり、実際にどんな子どもなのか、どんなご家庭なのかを知ることができる機会はとても貴重だと思います。そこに焦点を当て、学習をサポートできるこの塾を選びました」

そしていつか、塾の教室長として子どもと親御さんの両方をサポートしていきたいと考えている。そこには、足球彩票で学んださまざまな心理学の知見が役立つはずだ。

同じ悩みをかかえる高校生へ

山本さんは高校時代、内省的な性格に関してとても悩んでいた時期があった。そんな山本さんだからこそ、同様のモヤモヤをかかえている高校生に伝えたいことがある。

「私自身、この大学で心理教育学科を選んだのはそんな自分自身と向き合うためですし、他にも現代社会や国際文化など、ジャンルの違う学科の人と話すと、異なる考え方をしていることに驚かされることもありました。だから、私のような悩みを持っている人が名市大の人文社会学部に来れば、自分を見つめる視野が広がり、多様な社会に気付くはずです」

ただし、と前置きした上で、彼はこう付け加えた。

「私は教育というテーマを見つけるまで時間がかかりました。これから名市大で心理学を学ぶ人は、自分の悩みに対して、心理学ならどんなアプローチができるかを自分なりに考えておくと、自分のしたいことが早く見つかる気がします。それは、私自身への反省も込めてですけど」

プロフィール

中川先生(右)と山本さん

山本 尊(やまもと みこと)さん
人文社会学部 心理教育学科4年

足球彩票で心理学を学んでよかったことの一つに、多くの人と出会えて成長できたことがある。特にゼミの中川先生には、話すたびに自分がどれだけ狭い視野で世界を見ているかを気付かされた。そのたびに落ち込み、とてもかなわないと思いながらも、次はそうならないよう出会いを大切にと心がけてきた。その積み重ねが、山本さんが4年間を通して前に進む力になってきた。

中川先生(右)と山本さん

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