寄稿

カーデザイナーの基礎は芸術工学部での学び

　車のデザインとは、正に芸術と工学が融合したものです。在学中は芸術と工学の基本と、多種多様な専門領域の先生や仲間から考え方の違いを学びましたが、それは日産自動車でカーデザインを16年間担当してきた私のベースになっています。
　「Car designer should be smart, but also be egoistic.」カーデザイナーは、スマートであると同時にエゴイストであるべきだと思っています。
　カーデザイナーという仕事はチームで行います。エクステリアやインテリア、カラーやグラフィックなどのデザイナー、モデラー、エンジニア、プランナーなど多くの人々が関わります。その中でもデザイナーは、スケッチでその車のあるべき姿を最初に描き出す、いわばスターターの役割を担う仕事です。プロジェクトが始まり、スケッチコンペに勝つと、年令や国籍を問わずにリーダーとなり、自らイニシアチブを取り、冒頭で触れた芸術と工学について徹底的にこだわりながらチームをリードして行きます。
　一方で、プロジェクトはデザイナーが最初に描いた一本のラインから始まりますから、一人で描くアイデアスケッチはデザイナーにとって最も大事な仕事であるとも言えます。そこでは、エゴイスティックなまでに納得が行くまで作業をします。そうでなければ勝ち残って、車が完成して走るところまでは到底たどり着けない世界です。ですから、あるときは彫刻家のように形にこだわり、あるときは技術者のように機能にこだわり、あるときは写真家のように最高にカッコいいアングルを探し求めて、それをスケッチにします。
　大学で与えられる様々な課題に真剣に取り組んで行けば、芸術と工学の基礎は自ずと皆さんの体の中に染みつきます。その経験を信じて、それぞれが持つ夢に向かって大胆にチャレンジして行ってください。

Eyes On Design受賞のプレスリリース
https://usa.infinitinews.com/en-US/releases/release-
792a5c4140664f00b5274f9671f5eff0-infiniti-qx-inspiration-concept-awarded-best-
concept-vehicle-and-best-interior-at-2019-naias-by-eyeson-design?

QX inspirationデザイン開発のPress release
https://usa.infinitinews.com/en-US/releases/release-
0a9abc5d22a44c19a04c373028ea377d-infiniti-qx-inspiration-an-electric-infiniti-for-
the-future?

芸術工学研究科博士前期課修了
日産自動車株式会社　プログラムデザインダイレクター
清水 暁生

日産自動車株式会社プログラムデザインダイレクター。入社後はエクステリアデザイナーとして「ESSENCE CONCEPT」や「Q30」に参画。2012年から2年間仏ルノーデザインに出向し、レースカー「R.S.01」を手がけた。日産帰任後Design managerとして担当したインフィニティQX inspirationではEyes On Design三冠を受賞。2019年より現職。