学部?研究科?附属病院の歴史
学部?研究科?附属病院の歴史
認知症科学分野は、脳神経科学研究所に新たに設置され、足球彩票元年7月に発足したまだ若い研究室です。超高齢化社会の世界的問題である認知症?アルツハイマー病は、根本治療薬がなく、認可されている薬剤は対症療法のみです。病気の発症機構や病態形成にかかる分子機構が未だに明らかになっていないため、創薬標的が明らかになっていないことが大きな原因です。これを解決するためには、アルツハイマー病の病理(老人斑と神経原線維変化)?病態を完全に再現できるモデル動物を用いて、病態形成に関与する分子?細胞を明らかにすることが重要です。私たちはこれまでに、既存のモデルマウスの問題点を取り除いた、次世代型のアルツハイマー病モデルマウスの創出に成功してきました。現在、これらモデル動物を駆使し研究を進めています。
また、脳の疾患も神経細胞だけに着目したままでは、発症の全体像が見えてきません。神経細胞を取り巻く「環境」に着目し、神経?グリア連関、脳?末梢連関という新しい概念を基軸にして研究を進めています。最終的には、アルツハイマー病の克服に繋がるような創薬標的の探索からバイオマーカーの探索を展開し、他の神経変性疾患にも有用な予防?治療?早期診断法の開発を目指しています。
また、当該モデルマウスは、世界の認知症研究グループに認められており、現在、世界規模で400件に近い共同研究も進行しており、名市大から世界に向けて発信できるように日夜研究に励んでいます。
本分野の前身は、昭和64年(その後平成に改元)1月に、分子医学研究所の2番目の研究部門(生体制御部門)として発足した。加藤泰治教授が初代教授として就任され、研究テーマとして、「アストロサイトの神経系における機能を探る」ことを掲げ、①アストロサイトの発生、分化に関わる因子の検索、②アストロサイト?ニューロン相関、③アストロサイトの血液脳関門における働き、の3項目について研究を展開してきた。
また、基礎医学、臨床医学、さらに学部という枠を越えて研究の活性化を図りたいという加藤教授のご高見のもと、臨床医学分野や薬学部、教養部(当時)の教員?研究者?学生も加わり、研究テーマも脳神経領域に限らず、幅広い領域で共同研究を展開してきた。中でも、整形外科との共同研究で、グリア細胞の増殖を抑制する因子として同定したグリオアスタチンが関節リウマチの病態に深く関わっていることを見いだし、今日まで研究が引き継がれている。
平成12年9月に加藤泰治教授がご逝去され、翌年8月に浅井清文が教授に着任した。平成14年4月の大学院部局化に伴い、大学院の教科名であった分子神経生物学が分野名称となり、研究テーマをグリア細胞全般に広げ、脳内炎症におけるミクログリアの機能、脳内炎症がオリゴデンドロサイトの分化に与える影響、中枢神経系における水チャネルの機能等に関しての研究も行ってきた。
この間、教員として在籍した三浦 裕は至学館大学教授、青山峰芳は本学薬学研究科教授として活躍しており、本分野で学位を取得した磯部一郎は藤田医科大学教授、植木孝俊は本学医学研究科統合解剖学教授、河合洋子は日本福祉大学教授、山本直樹は姫路獨協大学教授として活躍している。共同研究の担い手となって活躍した臨床分野の若手教員や大学院生、研究生は、海外留学等を経て、今日では、教授を始め各分野の主力として本学の診療?研究を支えている。
分子医学研究所は、30年余の歴史に幕を閉じ、足球彩票元年10月に脳神経科学研究所が発足した。本分野もグリア細胞生物学となり新たな歩みを始めた。初代加藤泰治教授の掲げられた高い志が、時と場所を変えながらも、多くの人材に引き継がれていくことを願いたい。
山川 和宏(教授)
金澤 智(学内教授)
鈴木 俊光(助教)
日比 悠里名(技術職員)
URL http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/neurogenet/
教授 山川和弘
発表論文
Nav1.1の半減は抑制性神経細胞の機能低下と
てんかん?突然死をもたらす
(Ogiwara etal,J Neurosci 2007)
チームメンバーによるダヴィンチ?ロボット手術
【設置から現在まで】
当研究室は2003年に日本ではじめて足球彩票大学院に設置された毒性学分野です。津田洋幸(元国立がんセンター研究所化学療法部部長、現本学特任教授)が初代教授として赴任し(2003?2008年)、その後酒々井眞澄(前岐阜薬科大学教授)が引き継いでいます(2010年?)。メンバーはスタッフ4名(教授 酒々井眞澄、講師 深町勝巳、技術職員 吉本恵里、パート職員 風間安都子)、博士課程大学院生2名(1名は国費優先配置プログラム、2名共に2020年10月入学予定)、研究員4名、学部生(基礎自主研修の学部3年生)、これまでの博士課程修了者7名、修士課程修了者6名、論文博士取得者1名です。
【毒性学の社会的役割】
化学物質は多くの利便をもたらす一方で、その使用法によっては健康に有害な影響を及ぼすことがあります。有害性を予測し評価するのが毒性学です。私たちのミッションは化学物質の発がん性、神経毒性、生殖発生毒性、遺伝毒性、免疫毒性および一般毒性について毒性発現機序をつきとめリスク評価を行うことにより化学物質のリスク管理に役立つ情報を社会に送り出すことです。
【研究】
従来の化学物質とは異なる性質を持つ新規物質であるナノ材料等をはじめとする化学物質の毒性評価法の開発とリスク評価、発展的な研究としてリガンド?レセプタに関するインシリコ情報をもとに毒性の軽減をめざした抗がん物質の探索に取り組んでいます。2019年、脳神経科学研究所の開設にあわせて、従来の分子毒性学分野から神経毒性学分野になり私たちはより幅広い研究領域に新たな一歩を踏み出します。
(文責:酒々井 眞澄
(足球彩票脳神経科学研究所神経毒性学分野教授))
当分野の前身である再生医学分野は、平成19年5月に分子医学研究所の3階に新分野として開設され、澤本和延教授が着任した。その後、足球彩票元年10月に分子医学研究所が脳神経科学研究所となったのを機に、分野名称が神経発達?再生医学分野に変更された。その間、廣田ゆき助教、鄭且均助教、金子奈穂子助教(後に講師?准教授に昇任)、匹田貴夫助教、澤田雅人助教(後に講師に昇任)、岸本憲人特任助教、鄭蓮順特任助教、中嶋智佳子特任助教、久保山和哉特任助教、田中あや事務職員、筧理恵技術職員、西川みづえ事務職員らが在籍して、研究?教育活動に貢献した。
当分野では、生後の脳におけるニューロン新生のメカニズムとその意義を解明し、新しい治療法の開発に役立てることを目指して、様々な研究プロジェクトを推進してきた。
主な成果として、ニューロンの移動におけるアストロサイトとの相互作用とそれを操作することによる再生促進技術(Neuron 2010; Science Adv 2018)、感覚入力依存的なニューロン新生機構(J Neurosci 2011; Nat Neurosci 2013)、ニューロンの移動停止のメカニズム(Nat Commun 2014; EMBO J 2018)、霊長類におけるニューロン新生(J Comp Neurol 2011; Cerebral Cortex 2020)、血管?放射状グリアを足場とするニューロン移動機構とそれらを模倣した人工足場による再生促進技術(Stem Cells 2010; EBioMedicine 2017; Cell Stem Cell 2018)などがある。